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フランスでの「教科書問題」 [学問]

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/news/20051222k0000m030127000c.html

日本が悪い例として取り上げられていて、それは当然なのだけれど、やっぱり悲しい。歴史認識と政治、というのは根深くて、難しい問題なんだな、と痛感。こういうことに敏感に、そして感情的ではなく、それでいて当事者の気持ちを「想像」すること、これが歴史を学ぶ意義だと思う。今の、年号や出来事を網羅的に覚える歴史は、歴史教育としては最悪。大学受験生を見ていると、良く覚えている生徒は出来事を年代的に、どのように発生してどのような結果になったか、ある国だけではなく、横との関連(つまり他国の状況を背景と考えて)もすらすらと言えるのだけれど、それで歴史認識ができるかというとその様子ではない。RPGでの謎解きと、小ボス→中ボス→ラスボス、という流れを追っているようにしか見えない。

この歳でまだ学生、しかも就職にも非常に不利な歴史、さらにその中でも特に不利な西洋史の、さらに中世史をやってる人間として、やや「口実」ともとれてしまうけれど、やはり歴史を学ぶことは非常に重要だと思う。

以下、上記の記事の転載。

フランスで北アフリカなどの植民地支配の評価を巡る歴史認識の問題が論議を呼んでいる。移民系若者による今秋の暴動を受け、過去の植民地政策を肯定的に評価した法律に歴史家、野党などから批判が集中、「政治が歴史をどう扱うべきか」の議論に発展している。日本の教科書問題にも共通する課題が指摘されている。【パリ福井聡】

 問題の発端はシラク大統領の支持母体である保守与党「国民運動連合」(UMP)議員が提出、今年2月に成立した帰還者支援法。同法第4条はフランスの植民地支配について「学校の教育課程は海外、特に北アフリカでフランスの存在が果たした肯定的な役割を認める」と記している。

 法案を提出したUMPのクリスチャン・バネスト議員は「1962年のアルジェリア独立時に帰還した同国生まれのフランス人と、フランス側に立って戦ったアルジェリア人を念頭に提案した」と説明している。しかし、今年10〜11月の暴動を機に移民系住民から批判が上がり、野党の社会党、共産党も批判を開始、条項撤回を要求した。

 アルジェリアのブーテフリカ大統領は「フランスには(アルジェリアを植民支配した)1830〜1962年の間に拷問、殺害、破壊したことを認める以外の選択はない。(法律は)わが国のアイデンティティーを無にしようとした」と反発した。今月初めにはカリブ海の仏海外県マルティニクとグアドループの住民が抗議デモを繰り広げ、外遊を予定していたサルコジ内相(UMP党首)が直前になって取りやめに追い込まれた。

 歴史学者のピエール・ビダルナケ氏は「日本では第二次大戦中の中国での旧日本軍の責任を教科書がわい小化しているケースがある。法律で植民地支配を積極的に評価すればフランスも日本と同じような形となる」と日本の教科書問題を引き合いに出して、法制化を批判した。

 これに対しシラク大統領は今月9日、事態の沈静化を目指し「フランスには『官製の歴史』はない。歴史を解釈するのは議会の仕事ではなく歴史家のものだ」と演説した。しかし、同法が与党内から提案された経緯からドビルパン首相は即断せず、議会諮問委員会が3カ月後に出す調査結果を待って対応を決める構えだ。

 しかし、「『官製の歴史』はない」との政府認識がさらに物議を醸し、仏議会がこれまで成立させた(1)ナチスによるホロコーストの史実を否定する言動を禁じる法律(90年)(2)トルコで起きたアルメニア人殺害を民族虐殺と非難する法律(01年)(3)奴隷貿易を人類に対する犯罪と位置付けた法律(同) −−について、歴史家から疑問が投げかけられている。

 歴史家のフランソワ・シャンダナゴー氏は「(1)は良い法律だが、インターネット上への匿名の書き込みは規制できない。(2)は他国の歴史に関するもので極めて政治的だ。(3)の奴隷貿易は『15世紀以降、欧米大陸間で』との条件付きであり、政治的な内容だ」と指摘する。

 植民地支配の歴史は支配者と被支配者の側で認識が180度異なる。フランスにおける歴史認識論議の高まりは、移民系若者の暴動をきっかけに被支配側の視点に目を向けざるを得なくなったフランスの事情を反映している。

 ◇フランスの教科書問題

 アルジェリア植民支配について旧宗主国フランスの歴史教科書の記述は先入観が強いわけではない。マ二ヤ社の高校教科書は「植民地支配により伝統社会の破壊が進み、人種的偏見の概念ももたらされた」と表記、仏政府軍が囚人を繰り返し拷問していた証拠も記載している。

 高校で歴史を教えるアラン・ジャべロ教諭は「フランス側に厳しい見方を教えることを避けてはいない。だが、アルジェリア戦争は仏社会で非常に大きな比重を占めている。戦争にかかわった人がなお多く生存しており、すべてを率直に教えるというわけにもいかない」と植民地支配の扱いの難しさを語る。

 元歴史教諭のローラン・ビクト氏も「私や他の教師は80年代に教壇でアルジェリア戦争を教え、拷問にも、双方の暴力にも触れた。しかし、教育課程は教師の裁量に任され、教えるのが困難と判断すれば省くこともできる」と指摘している。【パリ福井聡】

毎日新聞 2005年12月21日 20時52分


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