Fry, Susan Leigh. 『Burial in medieval Ireland, 900-1500』 [学問]
私がこれからやりたいと思ってることに結構ぴったりの本が(うれしさと残念さ)! と思って借りたが、元々博論だけあって結構荒削りな論文。副題が『A review of the written sources』で、著者自身が紙数と時間に限りがあり、とりあえず文字史料から分かることをおおざっぱに纏めることを目的とした、ということだけあった。
一応自分の研究範囲は7〜9世紀頃なので、このあたりの史料を使ってあるところだけを流し読みした。書評で、タイトルと違って結構初期の史料も使われている、ということなので読んでみたのだ。しかし、それほど得るものはなかったが、とりあえず参考文献を作るためには非常に役立った。
おかしなところは、一次史料のほとんどが英訳のあるものばかり。「ラテン語の聖人伝の編者・・・」とわざわざ書いて、そのイントロダクションのみを使ったり(これはイントロ以外はラテン語のみ)、古アイルランド語の法史料を引用しているが、脚注を見ると明らかに孫引き。せめて、孫でもいいから刊行されてる史料なんだから、どのあたりを使っているかぐらい示唆が欲しかった。孫引きの元の本を見ても、どこからもってきたか書いてないし(泣)。これは今ちょうど友人達と翻訳を作っているものなので、非常に知りたかった。ともかく今まで読んできた部分には出てきてない、ってことしか分からず。
Etchinghamとは大違い。アイルランドの古法も、訳にいろいろな問題がある100年ぐらい前に出た6巻本だけしか使っていないし。
でもよく考えると、この著者の主要な研究年代は、おそらく中世中期から後期なんだろうと思うと、そこまで史料について突っ込んでもしょうがないのかもしれない。でもせっかくTrinity卒なんだからなぁ。
一次史料の扱い方は、非常に注意しなければいけないということを、改めて教えてくれた「反面教師」的本。
Burial in Medieval Ireland: A Review of the Written Sources
- 作者: Susan Leigh Fry, Susan Fry
- 出版社/メーカー: Four Courts Pr Ltd
- 発売日: 1999/10
- メディア: ハードカバー
Trinityは初期中世史はまったくダメだからねぇ・・・。この史料集めいた本は修論かと思ってました。初期についてはまったく使えないよね。
その部分を、kimukoさん、やってくれたら嬉しいな~。かなり大変そうだけど。。。
by ullibo^ (2005-11-06 10:12)
そう、ちょっと博論とは思えないよねぇ。中期以降の方は読んでないのでよく分からないんだけど、全部きっちり読むと博論ぽいのかなぁ。まあ、参考程度で。それ以上だったら、私が口を挟む部分が無くなってしまう危険もあったわけだから、それはそれで良し。
>やってくれたら嬉しいな~。かなり大変そうだけど。。。
そうなのよ。やれるのかどうかよく分からないまま出発してるんだけど。どうかなぁ。あと1年でどれくらい行くかなぁ。厳しそうだけど、博論まで繋げられるからねぇ(と自分を慰めてみる)。
by kimuko (2005-11-06 19:07)