George R. R. Martin, 『A Game of Thrones』 [読書感想文]
A Game of Thrones (Song of Ice & Fire)
- 作者: George R.R. Martin
- 出版社/メーカー: Voyager
- 発売日: 1998/01/05
- メディア: ペーパーバック
10 月の末に買った本、やっと読み終わった。本当はこんなの読んでる場合ではないのだが。一応「食事中及び食後と夜寝る前」だけに読む、という縛りをつけたが、途中からその縛りがかなり緩くなってしまった。
ローカス賞を獲得したファンタジー長編であるので、人を引きつける力は大きい。その話の進め方もかなり斬新で、一人の主人公の視点であったり、上から(ある種神の座から)出来事の描写を淡々と描くのでもなく、登場人物数人(8人)の視点から、少しずつ話が進んでいく。それぞれは10ページ程度の章ずつに分かれていて、しかも同時の出来事ではなく、次の人物の視点で話が始まる時には、少しだけ時間が流れている。
場所はどこか別の世界の、島とも半島とも言えない場所。巻頭の地図には載っていないが、東側にはやや「野蛮」な別世界が広がっていて、主となる舞台、「七王国」からの逃亡者や、そことは関わりのない別の民族(名前の付け方がイスラムや中国をモデルとしているよう)が暮らしている。時代は中世後期といった感じ。商人達が主体となった都市も出てくる。主な話は「七王国」での国王を中心とした政治闘争と、それに翻弄される北の国の支配者(王は「皇帝」のような存在で、七つの国の支配者を統括している)の家族。話し手のほとんどは子供達。シリーズ物なのでこのあと彼らがどのように成長していくかが楽しみ。
冒頭部分ではなにやらホラーな感じを醸し出したエピソードが語られるが、第1部の時点ではその正体や、そこで起こったことが何を意味するのか、ほとんど出てこない。これは今後大きな鍵となりそうだ。そして9年間続いていた夏が終わり、冬が始まろうとしている、大きな時代の変わり目でもある(冬と夏が不定期にやってくる、という設定)。
始めに舞台背景や政治体制、登場人物達の性格など何の説明もなく、ホラーなプロローグと何の関わり合いもなさそうなところから始まるので、しばらくは読みにくいが、語り手がほぼ一通り出そろうころから、スピードアップする。
剣は出てくるけれど魔法は出てこない、要請は出てこないけど竜が出てくるファンタジー、あるいは異世界の歴史の一幕、とでも言うべき物語。
残念なのは焦点を当てられる人物達がほぼすべて「○○家」出身で、市井の人たちの生活がほとんど出てこないこと。こういう物ではわりと致し方ないのかもしれないが、話の進め方、世界観、キャラクターが魅力的であるだけに、いわゆるファンタジー的なステレオタイプな設定が、ちょっともったいない感じがする。
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