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宇月原晴明 『信長 あるいは戴冠せるアンドロギュヌス』 [読書感想文]

これも一月前に読み終わったものですが。

まだ学校の始まる前で、長期滞在許可証とか学生証問題でバタバタしていて、落ち着き無く、ただただ現実逃避したかっただけの時に一気読みしたもの。今思うともったいないことをした。

買ってから知ったのだが、「日本ファンタジーノベル大賞」の大賞受賞作。大賞受賞作は『後宮小説』、『糞袋』以来。そういえばずーっとチェックしてなかったな。始めは鳴り物入りでいろいろと取り上げられていたし、第1回大賞受賞作品がすばらしかったから、話題にも事欠かなかったけど。
http://www.yomiuri.co.jp/jfn/

これもかなり良くできた話。古代シリアと、中世日本、そして物語が語られるのが第2次世界大戦前夜のベルリンと、舞台装置が秀逸。日本の戦国武将を古代ギリシア文化圏(ローマ帝国の東部)の文化と結びつけるという、まったく新しい視点を提示した歴史小説だと思う。安土・桃山時代をあっという間に違う意味で神秘的にしてしまった。まさにこれぞファンタジー。しかも小説に下地に実在の小説を使うところも、小細工が聞いている。といっても寡聞にして私は存じ上げておりませんでしたが。こっちを知っている人がこの小説を読んだ場合、どのような感想を持つのか聞きたいものだ。

斬新な舞台装置と特異な視点を持った歴史小説、として始まりからどんどん引っ張り込み、中間も、中だるみせず一気に読ませるが、残念なのがあっけない幕切れ。語り部の相方は始めからその正体はばれているので、こっちの扱いはいいとして、なぜ信長が明智光秀に討たれたのか、その理由付けがはなはだ希薄。あるいは、私が読み切れていないだけの問題かもしれないけど。途中までの、迷いのない信長の行動との差が大きいように感じた。これは、終わり方が決まってしまっている、歴史上の超有名人を登場人物にした場合の、難しさだとは思うが、もう一ひねり欲しかった。

信長―あるいは戴冠せるアンドロギュヌス

信長―あるいは戴冠せるアンドロギュヌス

  • 作者: 宇月原 晴明
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2002/09
  • メディア: 文庫




ちなみに下敷きにした小説はこれ。

ヘリオガバルスまたは戴冠せるアナーキスト

ヘリオガバルスまたは戴冠せるアナーキスト

  • 作者: アントナン アルトー
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 1996/01
  • メディア: 単行本


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